2025年 11月8日(土)、ダブルダッチチーム「Mrs.DOUBLE DUTCH」が結成10周年を記念したパーティーを開催する。そこでTHE ROPESでは、Mrs.DOUBLE DUTCHとのタイアップ企画として、リーダー・MISAへのインタビューを敢行。
前編ではミセス結成までのいきさつや、MISAのリーダー像について伺ったが、今回の後編では“あるエピソード”が飛び出す。
絶頂期を迎えたようにも見えるなかで、MISAの思いと、ミセスとしての思いに徐々に乖離が生まれていく。しかし、それでも彼女は決して諦めなかった。その末に掴み取った“絶景”と、迎えた10年の節目。そしてその先に、彼女たちが見据えるものとは──。
「Mrs.DOUBLE DUTCH」
ダブルダッチシーンの第一線として牽引するフィメールチーム。
メンバーそれぞれが国内外の大会で優勝経験を持ち、審査員やゲストパフォーマー、イベントオーガナイザーとしても幅広く活動。
自分たちがやりたいことができる環境を作っていきたい、どんな困難や年齢の壁を越えてでも動き続ける勇気を届けていけるような存在になりたいという想いをこめて、2016年に結成された。
結成10周年を契機としてイベントを開催するほか、3名の新規メンバーが加入。彼女たちが持つパワーで、更なる可能性に挑戦するチームとして躍動し続ける。
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「わたしごと」は、いつしか「みんなごと」に
Delight Japan 2017を優勝し、CONTEST WORLD 2018の予選シード権*を獲得。順風満帆にも見えたミセスとしての活動だったが、MISAの心に変化が訪れる。
*当時はDelight Japan 一般部門の優勝特典として、DOUBLE DUTCH CONTESTでのシード権が贈呈されることが慣例となっていた
MISA
CONTEST WORLD 2018で予選敗退してしまい、悔しかったですね。今振り返れば「ああすれば…」と思うことは出てくるけど、当時の自分たちにはあれが限界だったんだなとも思って。
そのあたりから、ミセスとして「女だけで勝ちたい」という気持ちが強くなっていったのですが、同時に私の心は疲れはじめてきてしまった。そして、疲れ始めた自分の心を、自分で無視していたことも覚えています。
──そんなことが。
MISA
今思えば「息の長いチーム」を築くためには、私だって本音をさらけ出さなければいけなかった。もっと頼ったり、もっと相談したりすればよかったのに、それができなかったんですよね。
近い人には分かると思うんですが、私は人に頼るのが下手なので(笑)。
私も「女性のプライド」みたいなものはあるけど、それと大会で勝つ、みたいなことは必ずしもイコールではなくて。だけどミセスとしての活動の中で「ミセスのプライド」「女子プレイヤーとしてのプライド」が固まり始めてきたときに「『勝つ』ってなんだ?」とか「楽しいだけではダメかな?」…と。
──でもMISAさんも思いもよらぬところで、メンバーの皆さんが「ミセス」や「女子プレイヤー」というところに燃えていたと。
MISA
そうですね。ミセスも私が始めようと言って、ついてきてくれる仲間たちが「じぶんごと」にしてくれている。凄いことだなと思うんです。
──MISAさんの「わたしごと」が「みんなごと」になっていくのって、一体どうしてなんでしょうね?
MISA
なぜなんだろう。私も思います(笑)。
でも1つは風通しが良いことかな。風通しがよいから意見を出し合えるし、そうすることで自主性も生まれるじゃないですか。自分の意見が無視されない組織というのは、そのようになっていくのかなって。今ふと思ったことですが。
そして冒頭にも話したことですが、私たちは周りの人々に本当に支えられている。でも、それも周りの人々が「みんなごと」として捉えてくれている感覚があって。
──分かります。そしてどのチームや団体でも、最終リーダーとして引っ張る人の“人間性”みたいなものって、ひとえに「愛」に尽きるのかなと思うんです。
MISA
そうだと思います。自分で言うのもあれですが、私も愛情深いとよく言われます(笑)。自分でも思う。
紆余曲折も経て、今は誰の意見も取りこぼさないぞって思うし、自信もある。軽い話も重い話も。なんでかは分からないけど。
──でも、疲れませんか?(笑)
MISA
そう、疲れはするんですよ(笑)。だから“いとま”も大事にしています。いろんな“いとま”があると思うけど。
冒頭にもお話ししましたが、やはり自分を大事にできないと他人を大切にはできない。
自分を出すことと、周りを尊重することのバランスは今もトライアンドエラーだなとも思います。
迷ったときは、今もたまにMAYUに電話して聞いてもらったり、「このやりかた違ったかな」って相談したりもします。
紆余曲折はあったけど、誰もミセスを諦めたわけでも、終わらせたかったわけでもなかった。今ではお互いしっかり向き合って話せたし、どのような意見があっても、結局チームって向かうところは一緒だということにも改めて気付くことができたと思います。
大会で勝ちたいとか、イベントを成功させたいとか。ルートが違うだけで目的は一緒。「そっちも道は楽しそうだから寄ってみるね」とか、「わたしこっちの道行ってみたいんだけど」とか、そういう各々の道筋は大事にしたい。

──自分と周り、どちらを尊重するかというバランスは難しいですよね。ただ、均衡を取り続けて疲れることって“あるある”だと思いますが、どうしているんでしょう。
MISA
そうですね、別にミセスに限らずある話です。
でも私は、疲れちゃうなというときも、結局ずーっといろんなことを考えていて。よくよく考えると「あの子ってああいうふうに言ってたよな」とか、「こういうことだったのかな」とか、「こう伝えてみよう」とか。
自分のなかでよく考えて、整理していることは多いかもしれないです。
──だけどその「道筋を大切にする」ことは諦めない、ということですね。
その後、ミセスは2023年のDOUBLE DUTCH CONTESTに出場。国内予選を勝ち抜き、続く世界大会では悲願の優勝を成し遂げる。決して勝利を追い求めるスタンスのチームというわけではない。しかし、諦めなかったMISA、そして彼女たちの執念と努力が、ひとつの大きな形として結実した瞬間であった。

なお、その優勝直後の2023年にFINEPLAYにて、世界大会までの秘話を訊いたインタビュー記事をリリースしている。
こちらも筆者が執筆させていただいたものだが、ぜひ併せてご一読いただければ幸いである。
「女子チーム」そして「継続するチーム」であるということ
“疲れ”てもなお、自分と周りのバランスの中でもがき、考え続けるのは、MISAのリーダー像を象徴するようなエピソードだったように感じる。だからこそMISAがはじめた「じぶんごと」は、「みんなごと」になっていく。
「まだまだそのバランスはトライアンドエラーです」と語るMISAだが、そんな彼女は「女性チーム」という特性を踏まえ、こう語ってくれた。
MISA
何も諦めずに全部進めてこれてよかったなと思います。諦めの悪いリーダーです(笑)。
でも、女子チームはこの感覚って大事だなと思うんですよね。とにかくメンタルが重要。精神環境が整っているところでなければ最大限のパフォーマンスは発揮できないし、ましてやそれを10年間も続けられないなと。
あと、女子は月のうち数日とか1週間くらいしかベストな状況がないとも言われています。
それによって、意図せずキツい言い回しになってしまうこととか、良い反応できなかったなということもあって、でもそんなことをいちいち突っかかっていたら、チーム運営は難しい。
みんな一生懸命生きているだけだし、体調やライフステージとか、いろんな事情があるから、それを全部受け止める覚悟がなければいけないんです。

──深く納得させられました。でもこれは男女混合でも、男性だけのチームでも大切な要素はありそうです。
MISA
そう思います。男女混合のなかでも「テンションについていきます」という器用な子もいれば、「ガツガツ対等にいけちゃうぜ」というカッコいい子もいて、それはそれで良いことだと思います。
けれど、女の子だけの空間はまた特別なものですね。
私がエステティシャンとして先輩から学んだことがあったんですが、たとえばメンズのエステサロンって、「3ヶ月後に10キロ痩せて、あなたの身体はこうなって、そのために必要なプログラムはこうで、それがいくらです」と、理論的に説明されるほうが契約されることが多いんですって。
でも一方で女性は、「今日ってどんな一日でしたか?」とか、その人の感情を揺さぶるアプローチのほうが契約される。逆に感情をキャッチできないと1円も出さないみたいで。
──なるほど…。たいへん勉強になります。
MISA
だから、この話を聞いている男の子のなかには「なんて非効率な…」って思う人もいるでしょうね(笑)。
でもこの学びも、過去体験してきたことも含め、女の子のチームにはこの“非効率さ”って大切だと思います。
──でも「非効率」と捉えられてしまうかもしれずとも、効率を超えた先にある重要なものを重んじることは大切ですよね。人と人ですから。
MISA
あと、一度大会に出て終わりというチームも、それはそれで花火みたいで楽しくでいいんですけど(笑)、続けてきて「継続するチーム」も良いなと思うんです。
ずっと一緒のチームだと、ネガティブなことがあったときも逃げられない。一度きりのチームなら上手く立ちまわることもしやすいでしょうね。でも、そこを逃げずに向き合い続けなければいけなくて、しかしそれで得られたものもいっぱいある。
今回のイベントもそのうちの一つで、良いものになるといいなと思っています。

ついに迎えた10周年! どんなイベントに?
そんな彼女たちが、10年の節目に選んだアクションがパーティーイベントの開催。
「わたしごと」の輪が拡がり、この10年を見届けてきた人たちと迎える「みんなごと」の一日について、その抱負を語ってくれた。

MISA
冒頭にお話ししたように、私たちが10年間続けてこられたことは、私たちだけの力ではない。
「本当にありがとう」という気持ちを伝えられるパーティーになればいいなと思います。支えてくださった皆さんと「みんなごと」として楽しんでもらえたらなと。
でも、練習をしていて「やっぱミセスってさすがだな」って思うのは、意見交換の量。知り合いが少なくても楽しんでもらうためにこうしよう、とか、ダブルダッチャー以外の方が見ても楽しんでもらえるために…とか。
今までお世話になった方たちにもそうだけど、これからお世話になるかもとか、少し遠いところからだけど応援してくれたりする人にも届けられるようなものにしたいとも思っています。
──ゲストチームやキャストも豪華ですよね。
MISA
オファーを快く受け入れてくださった皆さんにも本当に感謝しています。嬉しかったですね。
なんかもう、うちらからの愛情もみんなからの愛情も、まるっと“愛情パーティー”みたいになったらいいなと思います(笑)。
──もちろん、ミセスの皆さんのショーも楽しみです。
MISA
ウケるのが、まだ私たちは「下手なものは見せられないな」っていう気持ちが強くて(笑)。家庭があるメンバーも多いから、動き出し自体はかなり前からだったんですが、やっぱり直前期はいつも通りバタバタして、長時間の練習とかもやりこなせちゃっていることが面白いなって思っています(笑)。
──(笑)。でもそれも、皆さんや周りへの愛情ゆえですね。
「いつまでも人の活力になれたら」
10年という節目を迎えたMrs.DOUBLE DUTCH。しかし、このタイミングで新メンバーを投入するなど、まだまだ活動の“つづき”を感じさせるアクションも見られる。節目を超えたさき、次なるミセスの目的地はどこなのか。
「明確な策略はないけど…」と前置きしたうえで、MISAはこう話してくれた。
MISA
このまま変わらず年をとっていくんだろうなと思っています。イベントを機に辞めてーとか、そういうのじゃなくて。「まだその動きかたできるの?」っていう未来(笑)。
むしろ「まだやってんの」って言われてもいいんじゃないかなって思っています。
──DDCW2023直後にさせてもらった以前のインタビューでは、「めざせ10代目」なんて言葉もありましたよね(笑)。
MISA
それもそこまで明確な野望というわけではないけど、「この人たち変わらないね」って言われ続ける存在ではありたい。エネルギーがずっと変わらないチーム。
──ミセスの皆さんの“輪”が広がっていって、どんどん「みんなごと」の輪も広がっていくような。
MISA
それこそコンテストで優勝した(DDCW2023の)ときによく分かったんですが、「ミセスが世界一とったからマジで仕事がんばれた」とか、私たちの活動が、まさかのダブルダッチをやっていない人や、引退してしまった人の活力にもなっていたと。
今後大会に出るかどうかも分からないですが、そう思ってくれる人たちに、エネルギーを与えられ続けたらなとは思っています。
──ここにきて新メンバーも追加されましたよね。
MISA
案件やショーをサポートしてくれたり、ミセスとも縁深いメンバーに新たに加わってもらいました。
世代をこえて繋がれるコミュニティになれたり、世代をまたいで人に活力を与えられたらなと思っています。ただもちろん無理強いや、考えの押し付けをするつもりはなくて。
いつまでも人の活力になれたらいいなと思っているだけです。
──パフォーマーマインドですね。
MISA
やんなっちゃいますよね(笑)。
──そのうえで… あえて最後に伺いますが、ずばり今後やりたいなって思うことってありますか?
MISA
そうですねー、ふわっと思っていることは… 多分オリンピックに私たちが出ることは難しいけど、種目化されて、そこに将来何代目かのミセスのメンバーが出て、私たちが客席で横断幕とかキラキラしたうちわとか持って、「キャー!」って応援してるようなこととかしたいよなぁって(笑)。
「ウチらこんな凄いチーム作ったんだね」とかって泣いている将来の図とかあったら最高だなって思っています。
──素敵ですね。自分たちが輝こうというよりも、そこを一歩先に超えたところの何か。
MISA
まあ「多分オリンピック難しい」とか言ってる時点でウケますけどね(笑)。自分らも諦めてはないぞ、みたいな気持ちもある(笑)。
でもそういうこともあるし、「Mrs.DOUBLE DUTCH」と名乗っているからには、いつかスポーツ(競技)ジャンルのダブルダッチにもチャレンジしてみたいなと思っています。
私も競技出身だし、新メンバーにMIREIも加わってくれたから、いけるんじゃない?やってみる?とか(笑)。
──ということは、MISAさんが出る可能性も…。
MISA
どうでしょうね(笑)。ただ相当ハードなことだし、そもそもそこに自分が必ずしもいる必要性は感じていません。
ただ自分がいないならいないで、どう仕掛けていこうかなとか。
──今後のアクションも楽しみにしています。
ただ、大会に出るということも一つの重要な通過点ではあると思う一方、本当に「心が豊かになる」ことって、必ずしも結果に紐づいているわけではないとも思うんです。何かで勝ったからというより、どのような過程を辿ってきたかどうかということが、最終的な豊かさには結びついてくるなと。
そこを見誤ることなく続けてきたことが、ミセス10年間走り抜くことができた理由なのかなと感じました。横断幕をもってキャーキャー言いながら応援するのとか、いいなあ、楽しそうだなって思います(笑)。
MISA
一人ひとり、どこに出しても恥ずかしくない人たちだなって思います。ミセスって最高ですね!(笑)
私の宝物であり、誇りです。


